イタチ vs アヒル


イタチは音の出るおもちゃに興味を惹かれるみたいだ。特に鈴の音に敏感で、たとえ寝オチ寸前で瞼が半分閉じていても、どこかで鈴がしゃらんと鳴れば飛び起きてあたりをきょろきょろと見回す。見当たらないとわかるとまた寝床に潜り込むのだが、しばらくするとまたどこかでしゃらんと鳴る。飛び起きる。見回す。あきらめて眠りかける。するとまた鈴の音が。もちろん犯人は僕である。
音の出るおもちゃといえば、我が家にはアフラックのアヒルのぬいぐるみがある。体長5㎝くらいのちっちゃなもので、僕が保険に入ったときにノベルティとして貰ったのだ。こいつの腹には、強く押すと例の「♪よーく考えよー」の歌が流れるという仕掛けがしてあり、この音の出るぬいぐるみは当然イタチのお気に入りのおもちゃのひとつだ。




まずは腹を押して床に転がしておく。
♪よーく考えよー
イタチはどこにいたってその音を聞きつけ、おそるおそる近づいてくる。
♪お金は大事だよー
怪訝そうな顔でじっとアヒルを見つめている。
アフラックアフラック!グワッグワッ!」
最後のアヒルの鳴き声のところで少しびくっとするが、歌が終わるとイタチはすぐさまアヒルの腹に咬みついて、一目散にソファーの後ろへ持ち去っていく(ソファーの後ろにはイタチがお気に入りのおもちゃがためこんである)。




不思議なことに、もう何十回と同じことをくりかえしているのに、歌が聴こえてくると毎回同じように怪訝な顔で見つめ、毎回同じようにアヒルの鳴き声でびくっとし、毎回同じように曲が終わるまでは頑なに咬みつこうとはしない。いつも判で押したように同じリアクションばかり。こんなていたらくでは憧れのリアクション芸人への道は絶たれたも同然だということにイタチはまだ気付いていないのだろうなあ。