ホーム・スイート・ホームその2


昨日からのくしゃみが気にかかるので念入りに掃除機をかけ、最後の部屋チェック。パソコンラックの下を除いて潜れるところは全部目張り済み。イタチが眼を覚ましたところを見計らって、ケージのドアを開け放す。突然の状況の変化に慌て…ることなく寝ぼけ顔のまま出口の方へ向かうイタチ。固唾を飲んで見守る僕たち。「イタチ」と「僕たち」の絶妙なライミング。ドアに前脚をかけたまま多少逡巡したのち、イタチはゆっくりと部屋へと一歩を踏み出した。そこでまずは部屋のパトロール。床をくんかくんかしながらのそのそと部屋の隅々を歩き回るイタチ。「安心するまでほっとくこと」となんかで読んだ気がするので、僕たちも見守るだけで手を出さない。
しばらくすると多少部屋になれてきたのか動きが俊敏になってきた。やはり隅っこが好きでずっとうろうろしてるし、隙間を見つければ潜りたがってかりかり前脚でひっかいている。カーテンにはじゃれつき布的なものは咬もうとする。そしてやっぱり恐れていた事態が。一瞬目を離した隙にパソコンラックの下に潜り込んでしまったのだ。僕は慌てて床に這いつくばり、下をのぞいた。イタチは奥に丸まってきょとんとした顔でこっちを見ている。…む、無邪気な顔しやがって…!幸いコードに咬みついたりはしていないようだ。僕はすぐさま手を伸ばしてひきずりだそうとするが…ものの見事に咬みつかれた。昨日の今日ということもあるが、そもそも僕は動物に咬まれることに馴れていない。多少の恐怖心が芽生える。だが奥に潜ったままコードを咬むと、イタチ自身が危ない。僕は恐怖心を押さえながら、「デイライト」のスタローンのテイでイタチの救出を続行することにした。再度手を伸ばす。また咬みつかれる。もう一度。やっぱり咬みつかれる。ここで僕はあることに気付いた。あんま痛くない。牙だけに痛いことは痛いんだけど、そんな痛くない。なーんだ。急に気分が落ち着いたので、咬みつかれながらも首根っこをつかんで引きずり出した。わはは。僕の圧倒的大勝利。


驚いたのは、わざわざトイレをしにいちいちケージ備え付けのトイレまで戻ることだ。ケージの外に出すことで部屋のあちこちの隅にイタチの糞が落ちているという憂慮すべき事態も想定していたのだが、このイタチに限ってはそういうことはなさそうだ。誰が教えたわけでもないのになんて頭のいいイタチでしょう。英語で言えば「What a smart animal this イタチ is!」である。ホーミーで言えば「う゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」である。


結局1時間ほど外をうろうろしたのち、イタチは自分からケージに戻っていった。エサを食べ水を飲むと床に敷いてあるハンモックの下に(!)潜り込み、体を丸めるとそのままうとうと。僕らはそっとケージの扉を閉め、こうして「爆笑!イタチ外出大作戦 新春1時間スペシャル」は大成功のうちに幕を閉じたのだった。予想視聴率11.5%。